視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
大輔の家に着き、私と長田さんは車を降りた。
私の前を長田さんが歩き、家のチャイムを鳴らす。
しばらく経っても応答がなく、人が出てくる気配もない。
長田さんは一度私の方を振り返って私の顔を見た後、また前に顔を向き直してドアノブに手を掛け、捻った。
玄関の扉には鍵が掛かっていなくて、キィ…と、すんなり開いた。
胸騒ぎを感じた私は、長田さんを押し退けて大輔の家に入り込む。
靴を脱いで、行き慣れたリビングに足を進めた。
リビングには、紙を握り締めた大輔のお父さんが、一人、ダイニングテーブルに突っ伏していた…。