視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~

私の問い掛けに、大輔は驚いた顔をして、
『私を忘れてしまっているのか?セツ』
と、そう言った。


私が知ってるのは”大輔”だけ…


困惑している私に、大輔は悲しげな顔をしながら話し出した。


「私は…、清隆だよ…。本当に忘れてしまっているのか…セツ。」


「せ…せいりゅう?」



”清隆(せいりゅう)”って…誰なの?



大輔の腕の中で、その名前を繰り返し呟く私の耳に、階下から大輔のお父さんの叫び声が聞こえてきたんだ…。








「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」








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