視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
確かに、私の左の太股にには火傷の痕がある。
けど、大輔は元々それを知っているはず。
だって、その火傷の痕は…
火傷の…痕は…
あれ…?
何で火傷をしたのか思い出せない…
そう俯いて考え込む私に、自分を”清隆”だと言った大輔は…
「その火傷は、…遊廓で負った物だ。」
「…え?…遊廓?」
”遊廓”って…時代劇とかで見た、女性が男性に買われるっていうやつ?
いわゆる”風俗”みたいな…
大輔は私を悲しげに見下ろし、私の髪を撫でながら更にキツく抱き締めた。
その時、階下から階段を駆け上がってくる大きな音が聞こえてきたんだ。
一人じゃない。
長田さんと、おじさん…?
私は大輔にしがみついて、部屋の入り口を緊張しながら見つめていた…。