視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
大輔に抱き締められたまま困惑している私を気遣ってか、長田さんは大輔に話しかけた。
「清隆さん。セツさんは大丈夫です。セツさんと一緒で構いませんので、まずは着替えの方を済ませましょう。」
「な…長田さん…。」
長田さんは大輔の言った事に否定的な事は言わず、大輔を”清隆さん”と呼び、私を”セツさん”と呼んだ。
驚きを隠せずにいると、長田さんは私に曖昧な笑顔を向けて、
『今は、問い正す前に聞かねばならない事があるからね…。』
と言ったんだ。
大輔は漸く納得したのか、私から腕を解いた。
「今、着替えを出します。」
そう私は言って、直ぐに着替えの一式を用意し、長田さんや大輔と一緒に階下に下りて行った。