視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
「私は、塩谷清隆。…生年月日とは、生まれた”時”の事でしょうか?」
「はい。そうです。」
「…明治4年です。」
その大輔の言葉に私と長田さんは、息を飲んで顔を強ばらせた。
そんな私達を気にも止めずに、大輔は続けた。
「生まれた日付は知りません。私達の時代では”生まれた日”は重要視されていませんから…。”死んだ日”の方が重要とされていましたので。ですが、歳は18、9の頃だと思います。」
「…そう…ですか…。」
驚きながら書き込んでいく長田さんを他所に、大輔は私の方に向き直って微笑んだ後、こう言ったんだ。
「セツ。…君が生まれたのは明治7年だよ。」