視界の端の黒い靄 ~ MOYA ~
な…何言ってるの?
明治…7年?
…4年って…何…?
笑顔で私を見続けている大輔を、私は驚いた顔しか向ける事が出来なかった…。
それはおじさんとおばさんも同じで、
『大輔は何を言って…』
と、呟いていた。
長田さんは一度咳払いをした後、
『では、セツさん?”市川香歩”さんの生年月日を教えてくれるかな?』
と、そう言った。
私は、視線を大輔から長田さんに移して…
「市川香歩。平成11年……。」
と、そこまでしか答えられなかった…。
大輔の言う事に混乱していたからじゃない。
自分の誕生日を”ど忘れ”したわけでもない…
知らなかったんだ…。