forget-me-not


「そんな包帯で貴様の悍ましい瞳を隠したつもりか?」


くつくつと笑う男。
馬鹿にするような男の挑発に、ウルドは歯を噛みしめ怒りを露にする。



「黙れ……煩い奴だ。俺の前から立ち去れ」


ウルドが珍しく声を荒げる。包帯の下の紅い瞳は威圧的にぎらぎらと光る。

見るものを竦み上がらせるほどの剣幕。
普段は物静かなウルドからは想像もつかない。




「――やはり貴様は恐ろしい化け物だな。そうやってすぐ牙を剥く…。

その狂気が貴様の本性なのだろう?」


男の浮かべる嫌な笑み。
ウルドは目の前のこの憎い男を殺したい衝動に駆られた。



しかし、その時ふと脳裏にイオの笑顔が浮かぶ…。


穢れのないその笑顔。
自分を受け入れてくれたかけがえのない少女。



――イオを悲しませるわけにはいかない。


ウルドは、込み上げてくる殺意を必死に抑え込んだ。



「勝手にほざいてろ。
俺はお前の挑発には乗らない」


はっきりと言い放つウルドの表情は揺るがなかった。

この男に化け物だと罵られようと構わない。
自分にはイオがいるのだから。





「なんだ…つまらないな。

じゃあ、どうしたら貴様は俺と殺りあう気になるんだ?」


銀髪の男はウルドの大鎌を一瞥して溜息をつく。


「溜息をつきたいのはこっちだ…。
いい加減しつこいぞ、お前」


ウルドは男に冷たく言い放つ。
もうこれ以上、この男と話していたくはない。



「――魔物狩りの俺にとって、貴様は絶好の獲物だ…。


“あの時”、俺にとどめをささなかったのが貴様の運の尽きだな。

しつこいと言われたって構わない…。俺は貴様を狩るためならどこへでも行くつもりだ」



“あの時”

そう、ウルドと男が出会った時のことだ。



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