forget-me-not
残酷な程に、昨日までと何も変わらない世界。
行き交う人々は、昨日と同じように商い、人生を旅するのだ。
活気ある商店街の人混みの中、イオはついウルドの姿を探してしまう。
あの光を集め煌めく色素の薄い金髪が、この人の波のどこかにいるように思えてならなかった。
人混みが苦手なウルドが、こんな人の多い所にいるわけがないのに…。
「あれー?
もしかするとイオちゃん?」
どこかで聞いたことのある賑やかな声。
振り返ったイオの目の前には、あの運び屋四人組が立っていた。
「アル、ハノイ、ロキ、エデン……」
イオは四人の顔にウルドの顔を重ねてしまう。
この前、この四人に出会ったときにはウルドがいたのに…。
イオはもはや溢れだしてくる涙を止めるすべを持たない。
一方のアルたち四人は、突然泣き出してしまったイオにおろおろするばかり。
「うわぁーっ。泣かないで、イオちゃん。
一先ず落ち着いて、俺たちに何があったのか話そうか…?」
この中ではリーダー格のアルが、戸惑いながらもイオを落ち着かせようと宥める。
「あ…ほら、イオちゃん。ウルドはどうしたんだ?
あいつ、イオちゃんが泣いてたら黙ってないだろ」
ハノイがイオに慰めのつもりでかけた言葉…。
しかし、今のイオには逆効果でしかない。
「ううぅ……。
ウ、ウルドぉ………」
一向に泣き止む様子のないイオ。
こうして商店街で泣かれたままはまずいので、四人はこのまま商店街の近くの広場までイオを連れていくことにしたのだった。
「イオちゃん、少しは落ち着いたかな…?」
アルに問われ、まだ目を腫らしたままイオは頷く。
「ごめんね…取り乱して泣いたりして。
私らしくないね…。
心配かけちゃって本当にごめん」