forget-me-not


うなだれるロキに、イオは肯定も否定もできなかった。


「馬鹿野郎、イオちゃんを困らすんじゃねぇっ」


ハノイにばしっと背中を叩かれ、ロキはしゃきっと背筋を伸ばした。


「兄貴……ちょっと痛いっす」

ロキは背中を軽く擦り、困ったような笑みを浮かべた。


一先ず、一件落着。




「あ、そう言えば……。

どうして四人はここにいるの?」


イオは今更ながら、ずっと疑問だったことを尋ねてみた。
声をかけられたときから気にはなっていたが、その時のイオはそれどころではなかったのだった。




「ああ、そういや言ってなかったな。


今日は四人で商店街に買い出しに来てたんだ。
風力車も直ったことだし、明日からまた商売を始めることにした」


そうイオに説明したアルの表情は満ち足りていた。


「アルが町役場にちゃんと説明してくれたおかげでさ、俺たちも町に普通に入ることができるんだぜ?」


ハノイたち飛龍三人組も、ここサンドーネでは伸び伸びとできるようだ。
イオの顔も自然と綻ぶ。




「そっかぁ…アルの愛車も直ったんだね。
それにハノイとロキとエデンの三人も…。


よしっ。頑張ってる四人を見たら、私も頑張らなきゃって気分になったよ。

くよくよなんかしてられないもんね…。
私、そろそろ行くよ。
アル、ハノイ、ロキ、エデン…皆ありがとう」


イオは四人に深々と感謝の意を述べた。

栗色の柔らかな髪がふわりと揺れる。
前を見据える大きなイオの瞳は、包み込むような深い緑。



「ごめんな、一緒に行ってやれなくて。

でも俺たちはイオとウルドの味方だから」


アル達の優しさに、イオは胸が熱くなる。


“仲間”だ。

離れていても、信頼できる心強い味方。


このまま、四人の優しさに包まれていたい…。
でも、それではいけない。


「本当に、本当にありがとうっ。


――じゃあ、私はもう行くね…」


ベンチから立ち上がり、広場から去ろうと歩みを始めたイオ。




「イオ…っ。ちょっと待って」


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