forget-me-not
「イオちゃん…。
じゃあ、またいつの日か。
俺のこと、忘れないでくれよっ」
ロキはそれだけ言い残すと、恥ずかしそうにハノイたちのもとへと走っていった。
男にしては華奢で、なかなかの長身なロキ。
優しく、饒舌で、少し可愛い顔つきの飛龍…。
“そういえば、ウルドに殴られたのロキだったっけ…。”
一人残されたイオは、ロキからもらったお守りを見て頬笑む。
「大切なお守り、これで二つ目だ…」
小さな独り言に答えるように、イオの首もとの青い約束のネックレスが揺れた。
“灰色に見えた独りぼっちの世界。暗く深い孤独の海に溺れそうになっていた自分。
でも、実際は違ったんだ。
自分は、孤独から自分を救ってくれる光をずっと待っているだけだった。
自分で光を探そうともせずに…。
今度は自分で探しに行かなくちゃ。
何よりも大切な君を。
ウルド……”
確かなる決意を胸に、イオは歩きだす。
覚悟はできている。
この先に何が待っていようと、絶対に負けない。
一人見上げた空は、あの旅立ちの日と変わらない碧。
今日の日の旅立ちを祝福する蒼天に、イオはウルドの姿を見たような気がした。