forget-me-not
「――って、そんな都合のいい話があるわけないか…。
このままうだうだしてても仕方ないし…歩こう」
イオはおもむろに立ち上がり、服に付いた土や草を払う。
「よしっ。全然余裕で迷子だけど歩き回るぞー」
イオはすっかり自棄になったようだ。
一人で勝手に張り切りだし、ふっと前を見据えた…。
「え…っ?」
思わず声を上げたイオの目に映ったのは、一人の少女の姿。
橙色に近い金髪を横で一つに縛った、少し気の強そうな少女。
海のような少女の青の瞳は、イオをしっかり捉えている。
「あんた…こんな所で一人、何やってるわけ?」
言葉遣いは少し雑だが、凜とした少女の声に、敵意は込められていなかった。