forget-me-not




空がほんのりと赤く色付く頃、イオとレオナはナギア村の入り口に辿り着いた。


「レオナ凄いよ。
私、レオナに会えなかったら一生迷子だったかも」


イオの言葉に、レオナはけらけらと笑う。

「イオは大袈裟だね。
あたし、旅人なんだから地図くらい読めるって」

「私も旅人なんですけど…」

「あ、ごめん。そうだったな」


気を落とすイオの肩を諭すように叩き、レオナは自分の地図をさっと畳み、バッグにしまった。



「ほら、今日はもう宿を探さないと」

レオナは光がぽつりぽつりと灯りだした村に目を向ける。


ぼんやりと村に灯る淡い光…。
イオはナギア村の灯りにハノエラを思い出す…。

この朧気な灯りのどこかに、ウルドが居るような気がした。




「イオ?
ほら、宿見つけたけど…イオはこれからどうする?」

レオナの声にイオはふと我に返る。
改めて見渡した村の景色にもうウルドの面影は感じられなかった。


「あ、はいはい。
私も泊まるっ」

イオの返事に、振り返ったレオナはくすくすと笑った。


「賑やかな奴…」


親しみの籠もったレオナの呟きは、イオの心に温かくて心地いい。


「あはは。
それが私の取り柄だからね」


「それはよかった」


誇らしげに胸を張るイオを軽く躱し、レオナは一人先に宿の扉を開く。



「ええっ?
ちょっと待ってよ、レオナぁー」


少し情けないイオの声は小さな村の灯りに溶けていった。


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