forget-me-not
「でも薪は必要だもんね。
私は一人でも大丈夫っ。旅人やってるし。

だからウルド、安心していってらっしゃーい」


イオはウルドに手を振り、見送る気満々になっている。

どうも胡散臭いイオに、ウルドは一度心配そうな顔をするが、先程のイオの強さを思い出し気持ちを落ち着かせた。



「少し心配だけど、イオがそう言うなら…」


ウルドは薪を取りに暗い森の奥へ姿を消していった。

灯りも持たずに行ってしまったことが気掛かりだったが、その後でイオは一人納得した。


「ウルドだから灯りがなくても大丈夫なんだ。
暗がりでもばりばり見えそうな目だもんね」


うんうんと一人頷くイオ。
いつの間にか“ウルドだからできる”という勝手な法則がイオの中で確立したようだ。





「はぁー。なんか一人になった途端寂しいし少し恐い…。
今まで一人で旅してきたのに」



鞄の中身を漁りながら、イオは恐さを紛らわすために独り言を言い始めた。



「料理はどうしようかな。簡単な缶詰めとパンくらいしかないからそれでいっか」



鼻歌を歌いながら缶詰めを手際よく開けていく。
手抜き料理…というかなんというか。

イオはざっと小型の鍋に缶詰めの中身を移し、あとは火にかけるだけな状態を作った。



「案外早く終わっちゃった…」



これといった達成感もなく自分の分担が終わってしまい、することがなくなってしまった。




「早くウルドが戻ってきますようにっ」


さり気なく切実な願いであった。
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