forget-me-not
夜の闇の中、二人火を囲み夕食をとる。
パンと缶詰めのおかずといった質素なものだが、旅を始めて二人でとる最初の食事。
互いを知るいい機会…。
「ねぇ、ウルド」
唐突にイオが口を開いた。呑気にパンを食べていたウルドは慌てて顔を上げる。
「ウルドは何のために旅していたの?」
唐突な質問に勢いよくパンを飲み込んでしまったウルドはむせた。
イオに背中を叩いてもらい何とか持ちなおす…。
ウルドの瞳には薄ら涙が光っていた。
イオはウルドの、外見に似合わず意外とへたれな所がさりげなくツボだった。
一緒にいるといろんなウルドが見えてくる。
ウルドの人間らしさには、旅初日の今日からつくづく驚かされた。
「…ありがとう、何か悪いな。
で、俺の旅の目的の話だったよな…。
俺がイオを探していたってのは、昨日言っただろう?あとは…何というのか、自分を見つけるための旅でもあった」
ウルドは馴染むとよく喋ってくれる。
表情豊かにイオに一生懸命言いたいことを伝えようとしてるのがわかる。
直向きな紅の瞳は人間のそれとは違うけれど、イオはそんなこと全然気になりはしなかった。
ウルドの前では自然体でいれるイオ。きっとウルドも同じだろう。
「そっかぁ。私を探してたんだったよね。
それに自分を見つける旅か……格好良い〜」
言いながらイオはウルドの髪をくしゃくしゃにした。
色素の薄い金の髪はふわふわとしていて気持ちよかった。漂う仄かないい香りはウルドの匂いなのだろうか。
驚きながらも、おとなしくされるままになっているウルドはなんだか可愛いらしい。
恥ずかしそうに頬まで染めている。
「なんかウルドって可愛いくて面白いねー。それに案外喋るっ。
最初は寡黙でクールで他人には興味ないタイプだとばっかり思ってたよ」
イオはまだウルドの髪を弄る手を休めない。
ウルドはイオに髪を弄られながらも次のパンに手を伸ばした。