forget-me-not







イオがふと目を覚ます。
隣にはまだ寝息をたてているウルドの姿があった。


綺麗な寝顔を壊してしまわないように、そっと起き上がった。





草木の朝露が太陽の光を吸収したように綺麗に輝く。木漏れ日は温かく、眩しく森を照らす。



「――ふんぬぅっ」

イオはぐいっと両腕をあげ、大きく伸びをする。
朝から元気なイオは早速朝食の準備に取り掛かろうと張り切りだした。



夕食と同じメニュー。
荷物を最低限減らすためにはやむを得ない。



しかしきっとウルドは満足するだろう。
考えてイオはほくそ笑んだ。


昨晩知った、意外なウルドの好み………パン。
あのウルドが幸せそうにパンを頬張る姿は様々な意味で傑作だった。


知れば知るほど面白いウルドの本当の心。



別にウルドが何者だって構わない。
自分を大切に思ってくれている――それだけで今は十分だと思った。






イオはパンを切りながら眠るウルドの顔を伺う。

綺麗で穏やかな寝顔に安心した。





「…いい寝顔。どんな夢を見ているんだろ?


特別にウルドのパンにジャムいっぱい塗ってあげようっと」





イオは着々と料理をこなしていく。


温めた缶詰めのスープの香りが辺りに漂いだす頃、ウルドがよたよたと起きて歩み寄ってきた。




とろんと眠そうな目を擦りながら、イオの隣に腰を下ろした。



「―――おはよう、イオ。朝食ありがとう」


「いいえー。随分と眠そうだね、ウルド」



ウルドは大きく首を縦に振る。その顔はやはり眠そうだ。

寝癖がまた、いい感じに跳ねている。柔らかい髪が寝癖で外ハネし、天使のような髪型になっている。


それが似合ってしまっているのだから、驚きだ。

瞳さえ違ければ、ウルドは天使になれる素質があるとイオは確信した。
外見も中身も。
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