forget-me-not
「はい、どうぞ。夕食と一緒だけど勘弁ね」
イオは朝食をウルドに手渡し、手を合わせた。
ウルドもイオに習い、手を合わせてみる。
「はい、それではいただきまーす」
「いただきます」
元気なイオの挨拶。
それに続く元気のないウルドの挨拶。
白い肌に、低体温。
見るからに低血圧そうなウルドは朝に弱いのだろう。
旅立ちの朝はちゃっかり人混みのせいにしていた。
「美味しい?」
イオが尋ねるとウルドは小さく笑う。
あまりに幸せそうに食べるその様に、イオも確かな作りがいを感じた。
他愛もないことを話している内に食事は進み、あっという間に皿は空になった。
手を合わせ挨拶し、早速話に入る。
「今はどこを目指しているの?」
二人はお腹を休めながら、地図を広げて話し合いを始めた。
「今は…ここから一番近い村にしよう。
地図では…………あった。この森をこのまま西に抜けてすぐの所にある。
ハノエラという村だ」
ウルドが地図を指さす。
現在地が地図でどのあたりかわからないイオにはさっぱり伝わっていないようだ。
一応相槌をうっておくイオは知ったかぶりのプロと呼ぶに相応しいのかもしれない。
まだ行ったことのない町村に行くことは旅の楽しみのひとつ。
特に町や村がそれぞれ信仰している偶像や、神話などは非常に興味深い。
神獣―――[自然などの世界のあらゆる主体となる要素を司る神聖な存在]を祀る神殿も各地に多々存在する。
ハノエラに神殿や遺跡などはあるのか。
イオは期待に胸膨らませ、深緑の瞳を輝かせた。