forget-me-not
「やっぱ最初は村を探索しようよ。
必要な物買い揃えたり…、魔物退治とかの仕事依頼受けたりだとか…。

私、今までの旅はそうしてきたんだ」



イオはウルドの手を握ったまま、手を振り回す。


イオが動くたびに音を立てるお気に入りの剣は、あまり背が高いわけではないイオには大きく感じてしまう。



「俺もイオのプランに賛成だな」


イオの好き勝手に振り回される自らの手を見て、ウルドは困ったように小さく笑う。




「じゃあさー。いろいろ見て回ろう」



イオはウルドと手を繋ぐ。イオからすればウルドの手はひんやりと冷たく、逆にウルドからすればイオの手はほんのり温かい。





ちらっとイオがウルドを見た。


またもや無意識に俯いてしまっていたウルドは苦笑いを浮かべる。



「ウルドってば…。

やっぱり人が恐いの?」



イオに問われて再認識する自分の癖。


今までの経験から、無意識の内に俯いてしまうようになっていたようだ。



少し考えてからウルドは一言…。




「……よくわからない。癖かもしれない」



そんなウルドを察してか、イオはウルドの手をぎゅっと握りしめた。



「大丈夫。しっかり握ってるから」



イオの優しい瞳は強い輝きを放っていた。




イオに手を引かれ、ウルドは歩く。



歩きながら見渡す景色は何故か、いつもと違って見えた。




人々の輝く笑顔。
活気溢れた村のメインストリート。







「ちょっとちょっと。
そこのお二人さんっ」



ぼーっと村の景色を眺めていたウルドは近くで発された声にびくっとする。




「ん、私たち?」


イオが振り返るとそこには一人の露店商人。


若い女性で、ゆるやかなウェーブの蜂蜜のような髪を持つ綺麗な人だった。



「そうよ。よかったら私の店で何か買っていかないかしら?」




ふんわりとした印象の商人は二人に笑いかけた。


自分を見ても特別驚いた様子を見せない商人を、ウルドは不思議に思い首を傾げた。
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