forget-me-not
「きゃー可愛いピアスだあ。どう思う?ウルド」
イオは左右それぞれ、ハートとスペードの飾りのついたピアスを手に取り、物思いに耽っていたウルドに聞いてくる。
正直、可愛いものがわからないウルドは曖昧に頷いてた。
するとイオはぱっと表情を明るくして鞄から財布を取り出した。
「やっぱりウルドもそう思う?
じゃあこれ下さいな」
上機嫌のイオはそのままピアスを衝動買い。
あまりの決断の早さにウルドは何も言えなかった。
「はい、スペードのピアスはウルドの分ね。
ネックレスもらったお礼だから」
イオは買ったばかりのピアスを嬉しそうに眺めると、スペードの飾りがついている方をウルドに手渡した。
ウルドはじーっと広げた手の中のピアスを見つめた。シルバーのそれは太陽の光を反射して眩しい。
「ありがとう」
ウルドの照れくさそうなお礼。
恥ずかしがり屋なウルドはこんな時いつも頬をほんのり赤く染めるのだ。
そんな二人のやり取りを見ていた商人は微笑んだ。
「素敵な彼氏さんですね」
その言葉にウルドはぎょっとする。
「彼氏…?
ああ、ウルドは大切な仲間ですよ」
イオの言葉もまた、ウルドをぎょっとさせた。
“大切な仲間”
けれど嬉しい少し寂しい。しかし否定されてしまったことは仕方ない。
“もし自分が人間なら…”
ウルドは一人儚い願いを心の中で唱える。
叶うはずがない願いだとは知っている。しかし願わずにはいられない。
イオの笑顔を見るたびにその思いは増していく…。
隣でイオは早速ピアスを右耳につけて商人と仲良く話している。
どうやら意気投合している様子。
ウルドはちょっとした疎外感に静かにうなだれた。
そんな最中、ウルドはあることに気が付く。
この村には人間じゃない者の気配が沢山する。
何となく雰囲気でわかる。それらが村の人間に馴染み、生活している。
「この村は人間以外の存在を差別しないのか?」
ウルドは弾みで商人に聞いてしまった。