forget-me-not
「そうだーウルド。明日はこの村の外れにある遺跡に行かない?
興味あるんだよね…トレジャーハンターみたいなこと。私のこの剣も古い廃墟で見つけたお宝なんだ」
先程のいたずらなど忘れ、にこやかに自らの剣を指差し説明するイオ。
イオには大きすぎる剣は、イオの背中でしっかりと提げられている。
重そうな剣だが、意外に軽いから助かると、イオが笑う。
「村外れの遺跡か……」
ウルドは昼間聞いた遺跡の噂のことを思い返した。
噂によると、かつてこの辺りで信仰されていた神獣の神殿の遺跡らしい。
神獣の名は“ウェリムーザ”。“森”を司る守り神。
慈愛に満ちた心優しき神獣。草花を纏った大蛇のような姿をしており、ウェリムーザが通った跡には美しい草花が咲き誇るのだそう。
しかし古い神殿なので、今はもう遺跡状態。
強い魔物が出るとか出ないとかで、村人は近づきたがらないそうだ。中に入る命知らずな輩は、旅人くらいだという。
「う……ん。
イオに何かあれば俺が何とかすればいいか。
無茶はしないで…。
これだけは約束。
いい?」
ウルドの心配そうな眼差しに一瞬心動かされるも、イオは強い意思を貫いた。
「大丈夫。約束する」
小指と小指で指切りげんまん。
指切りげんまんを知らなかったウルドに説明するのが少し大変だった。
約束を破ったら本当に小指を切るのか、本気で聞いてきたのには驚きだ。
切らないことを教えたら教えたで、単なる脅しか…と安心していた。
それも何だか違う気がしたが、もう指切りげんまんについて突っ込むのは止めておく。
ウルドの一生懸命に考える姿を見ると、否定なんてできなくなる。
いつのまにかイオの方が立場が上になったようだ。
お互いにこちらの方が居心地がいいのも事実だろう。