forget-me-not



「ウェリムーザの絵が気に入ったのかい?」


店主が二人に声をかける。


「はい、明日村外れの遺跡に行くんで興味があるんです」



イオのはきはきとした答えに店主は“元気がいいねぇ”と笑った。




「あの遺跡は強い魔物が多いから気を付けるんだよ。未熟な旅人が何人も奴らの餌食になってしまった。


それでも行くなら私は止めないが…」



店主の心配そうな顔に、ウルドはイオの方を見る。
そんな危険な場所、行かない方がいい。イオが魔物に喰われてしまうなど想像したくない。




しかし、イオは全然不安そうな顔をしていない。むしろ輝いているようでウルドは落胆する。
もはやイオを止められないだろう。



「大丈夫です。私たちこれでも強いですよー。
そんなこと言われたら余計行ってみたくなります」



私たち強いって……そんなの何を根拠に言ってるんだろうか。
ウルドは頭を抱える。





「そうか、なら安心だ。

お客さんは二人一部屋でいいですか?」




店主、何安心して……。
ウルドはもうそれについて考えるのは止めた。





一方のイオは別のことを考えていた。



二人一部屋…。
店主に問われ、改めて考え直してみる。

ウルドは確かに男…。




イオはウルドをちらりと見やった。

呑気に欠伸をしているウルド。欠伸をしても端正な顔は崩れない。



「?」



視線に気が付いたウルドはイオを不思議そうに見る。紅い瞳をぱちくりと瞬き。




イオの心はすでに決まっていた。




「はい、お願いします」



笑顔でチェックイン。
店主の部屋案内に従う。




案内された部屋は質素だが、落ち着いた雰囲気でやけに心地よかった。


簡素なベットが二つ。
部屋に置かれた小さなテーブルには一輪挿しが。


青く小さな花。
どこかで見たことあるような花。



「可愛い…何の花だろう」


イオの呟きにウルドは振り返った。
その哀しげな顔に、イオは小さな胸の痛みを覚えた。


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