forget-me-not
1
「ねぇー?」
「何?」
「ねぇー?」
「……」
沈黙。
「いきなり黙るなってー」
イオがぐずるように言うと、呆れたようにウルドが顔を上げる。
汗をかき、疲れた様子のイオと、汗などかかず、爽やかなウルド。
対照的。
「イオ、あともう少しで次の町に着くから頑張ろう」
ウルドは不器用にイオを励ます。
渋々イオは黙った。
二人は自然豊かな村ハノエラを発ち、次の町を目指しているところ。
やっと森を抜けたと思ったら次は寂れた荒野。
遥か先は土埃のせいか霞んで見えない。
それにより次の町が見えないせいで、じれったいイオはしきりにウルドにちょっかいをだしていた。
鬱陶しいながらも、ウルドはイオの悪戯に照れつつ、しっかりと反応していた。
こんな他愛もないやり取り。
自分には決してあり得ない夢だと思っていた…。
ウルドは切なげな表情でイオを見据えた。
夢は永遠には続かない。
いつかはこの夢も覚めてしまう?
ウルドは耐え切れずに視線を地面に移した。
乾いた大地が悲しみを引き寄せる。
寂しげにウルドを誘うのだ。
「ウルド……悲しそうな顔。
そんな顔しないで、一緒に歌おう」
イオはまた、突拍子もないことを言いだす。