forget-me-not
「ええと…。私は君に聞きたいことがいくつかあるんだ」
イオは正座し、目の前に同じく腰を下ろす男に視線を向ける。
男の紅の視線にたじろぎはするものの、目を反らさずにじっと見つめた。
時間の経過が遅く感じるのは不思議な雰囲気に包まれているからだろう。
「どうぞ」
男の返事。
イオは男を探るようにじっと見つめた。
色素の薄い金髪。
髪の上の方をふわふわとさせ、肩辺りまで伸びる襟足はすっきりと軽い。前髪は左目を隠すようにして長めのようだ。
そして何より目を引く紅の瞳。爬虫類のように縦に長い瞳孔は人間ではあり得ない。
「こういうこと聞いていいのかわからないんだけど、君は何者なの?」
真剣なイオの問いかけに男は自嘲気味に笑った。
澄んだ深緑のイオの瞳は自分を拒絶していない。
明るく真直ぐと自分を見据えていて……まるであの日の様に。
男は優しく、儚げな表情でイオを見た。
「俺は‥‥‥」
言い掛けて止めた。
イオは心配するような不安な顔で男を見つめる。
今はまだ言えない。
否、言える訳がない。
男はただイオに嫌われるのが恐かった。
自分の本性を知ったらイオはきっと悲しむ。
ならば、隠せるだけ隠し通そう。イオを傷つけないために。
男はぎこちなく笑みを浮かべた。
「俺は…ウルド。イオ、君を迎えに来た。一緒に来てほしい」
少しの静寂。
「…ん?」
イオは状況が掴めず、小さく首を傾げた。