forget-me-not
「慰め合いはお仕舞いだ。早く座れ」
赤髪の命令にウルドはわざと聞こえるように舌打ちをして、座った。
気に食わないといった顔で不機嫌そうにしている。
「何だ、その目付きは…」
赤髪はウルドを上から睨み付ける。
両者の間に微妙な空気が流れる。
「――なぁ、ウルドってこんなに気性荒かったっけか?」
「ううん。私の前だともっとへたれでいじられ。
今は本当に怒っているみたいだね…」
アルとイオ、周りにばれないように、こそこそと会話をした。
「ハノイの兄貴、どうします?
こいつら何もお宝持ってなさそうですよ」
灰色の髪の男が溜息混じりに言う。
イオは正直むっとした。
“お宝持ってなさそう”など失礼にも程がある。
「ああ、そうだな。
今回は外れかもしれない。
ロキ、エデン…仕方ないから現金だけ奪え」
ハノイと呼ばれた赤髪の言葉に、二人の手下は従うようにイオ、ウルド、アルに近付いてきた。
現金を奪われたら町に着いてから困ってしまう。
現金の死守…。
三人の頭にはそれしかなかった。
もはや情けは無用。
真剣に戦わないと、今後の旅に支障がでてしまうかもしれない。
「ウルド、こうなったらもういいよ。
悪者は成敗しなきゃ」
イオはウルドにそっと耳打ちする。
一瞬顔を赤らめたウルドはすぐに平然を装い、すくっと立ち上がった。
「あ?
金髪さん、やんの?」
ハノイの挑発的な言い方も見事にスルー。
ウルドは肩から下ろした大鎌を構え、感情の籠もらない瞳でハノイの姿を捉えた。
「ハノイの兄貴……あいつやばいっすよ」
「止めときましょう?何かあってからじゃ遅いです」
ロキとエデンが口々に言う中、ハノイは腰に差していた剣を引き抜き、戦う姿勢を示した。