forget-me-not
「私を迎えに…?」
イオは目の前の男…ウルドの言葉に目を丸くする。
「君は私を知ってるの?」
ウルドは何も答えなかった。寂しげに笑うだけ。
「変なんだ、何だか初めて会った気がしない…。私たち初対面だよね?」
イオの質問にウルドは答えるのを躊躇してしまう。
何と答えればいいのかわからない。
「今はまだ…、その問に答えられない。でも時が来たら必ず話すから。
俺自身のことも全て」
ウルドはイオに納得のいく答えを返せない自分を責めた。
しかしイオは気にしてない様子。
「そっか。じゃあ私はその時が来るまで待とうかな。
ウルド優しそうだし、私もちょうど一人旅は寂しいって思ってたんだぁ。
ちょっと急だけどこういうのもいいかも。
よろしくね、ウルド」
イオは満面の笑みでウルドに手を差し伸べた。
「…?」
ウルドは差し出されたイオの手を見て、困ったような顔をする。
人と関わらないウルドは握手を知らないのだろう。
イオはそんなウルドを見て頬笑んだ。
「ウルド、握手だよっ。手を握るの」
きょとんとしていたウルドはイオの言葉に、おずおずとイオの手を握った。
ウルドの細く長い指。
低体温なのかひんやりと冷たかった。
「頼りない私だけどよろしくね。ウルドの足引っ張っちゃうかもしれない」
ウルドはその白い頬を微かに染め、黙ってイオの言葉を聞く。
その表情はどこか穏やかで幸せそうだった。
「ウルドのこともまだよく知らない…。でも信じるよ。君は私を必要としてくれたから」
そこまで言い、イオは恥ずかしそうに笑う。
本当によく笑う少女だ。
「ありがとう。イオ…、君は優しいんだな。
俺は正直イオのもとに来ようか迷ってた…。
俺はこんな容姿だからイオに拒絶されるんじゃないかと恐かった。
でも来てよかった。こんな俺にイオが笑いかけてくれるなんて夢にも思わなかった…」
本音をイオに打ち明け、ウルドはすっと立ち上がった。