forget-me-not
「―――でも風力車が駄目なのにどうやって俺らを運ぶんだ?
まさか俺らをおんぶして徒歩とか?」
アルの問いにハノイは首を横に振る。
ハノイの横でロキとエデンは顔を見合わせてくすくすと笑った。
「――おんぶ……おしいかもな。
確かにあんたらには俺らの背中に乗ってもらうさ。でも徒歩じゃねぇ……飛ぶんだよ」
ハノイは得意気に笑った。アルとイオはますます首を傾げる。
ハノイの言葉の意味に気が付いたのはウルドだけ。
ウルドは深紅の瞳の瞳孔を細め、まじまじと盗賊三人組を見る…。
ハノイ達三人。
確かに見た感じは普通に人間。しかしウルド同様、瞳の瞳孔が爬虫類さながら…縦長い。
「――お前らは何の魔物なんだ?」
ウルドの言葉に、イオとアルはやっと理解できた様子。
謎が解け、テンションの上がった二人はしゃいでいる。
「――俺らはな、里を滅ぼされて行き場を無くした飛龍……と言ったら驚くか?」
“飛龍”
属に言う、ドラゴン…そんな物。
“天空の支配者”とさえ言われる程、力のある魔物。
しかし、その強さや容姿の美しさ、鱗などの身体の一部を求める強欲な人間達により捕獲され、数が減ってしまっている。
「―――飛龍…?
なんか強そうだね、ウルドっ?」
イオがウルドをつつき、笑った。
ウルドは顔を赤らめながら俯き加減に“――うん”と一言。
ハノイは目の前のウルドの変わり様に驚きを隠せなかった。
あの、血の紅がよく似合う冷酷非道な悪魔のような男ウルドがこんなにも可愛いらしく照れている。
本当に…先程、身の丈程の大鎌を振り回し、自分を死の瀬戸際まで追いやった人物なのか。
戦い、ウルドの強さを身を持って知ったハノイですら疑ってしまうくらい。