forget-me-not
「―――俺は化け物なのか?」
「――はあぁ?」
ハノイは思いもよらない質問の内容に、バランスを崩しそうになってしまった。
「――んな変な質問……ふざけてんのか?」
ハノイは思わず半笑い。
しかし、真剣に質問したのにハノイに笑われてしまったウルド。
わざとらしく大きな舌打ちをする。
「―――何がおかしい?
俺は至って真面目に聞いたんだ」
クールを通り越した、殺意さえ見え隠れするほどの冷めた視線。
「うわ……。
悪い、悪かった」
直ぐ様ハノイが謝ったことは言う迄もない。
「あ、俺はだな…。別にお前が化け物だとは思わないぜ?
まず、俺だって人間じゃないしな。
――それに、お前の言う“化け物”って何だ…?」
ハノイがちらり振り返り見たウルドの表情は暗い影を落としていた。
“化け物”
認めたくないその言葉はウルドの中で繰り返される。
心に烙印の様に刻み込まれたそれは、癒えぬことない傷。
「――人と違う者…異端な者…。
人間の恐怖の対象だろうか」
ウルドはぽつりと答えた。自身で古傷を剔るような思い。
しかし、ハノイは首を横に振る。
「違う…違うな。俺はそうは思わない。
俺らからすれば、自分らの私利私欲のために里を滅ぼした人間たちが“化け物”に見えた」