forget-me-not
「――賑やかだな」
ウルドは一人、イオ達から少し離れた場所で静かに呟いた。
「ウルド…。お前は混ざらなくていいのか?」
一人寂しげな様子のウルドを見兼ねてか、ハノイはウルドにそっと声をかけた。
「俺はいいんだ…。
苦手なんだよ、他人と喋ること。
それに……、イオがあんなに笑って楽しそうだ。
それだけでいい」
そう言って自嘲気味に笑うウルド。
その表情は悲しみというよりは諦めだった。
(確かに自分にとって、大切なイオが笑顔でいてくれることは嬉しいことだ。
イオが笑う…。
たったそれだけでいい。
それだけでよかったはずなのに、どうしてこんなに胸が、心が痛いんだろう…。
どうして、自分はこんなにもイオたちと違うんだろうか……)
その時、一人で物思いにふけるウルドの額に小さな痛みが走った。
はっと我に返り、自らの額にそっと触れてみた。
知っている。
これは以前イオが教えてくれた……デコピン。
「――おい、ウルド。
何、自分の世界に入ってんだよ。
ほら、俺らも行くぞっ。お前の大好きなイオちゃんの所へさ」
いたずらに笑うハノイ。
ウルドの気持ちを見透かしているようなそのハノイ笑みに、ウルドはほんのり頬を赤らめ、何も言い返せないまま、外方を向いてしまった。
「本当お前は素直じゃないな…。
まぁ、素直なお前ってのも想像できねぇけど」
「――余計なお世話だ」
口ではハノイを冷たく突き放しているウルドだが、その口元は微かに笑みを浮かべていた。
「本当にお節介な奴…」
ウルドの呟きは小さすぎてハノイには聞こえなかった。
「あ、ウルド今なんか言った?」
ハノイが目を細めながらウルドに問う。
「いや、別に」
一言、無愛想に言い放ったウルドの紅い眼光は穏やかに優しかった。