forget-me-not





「本当に今日はありがとうございましたっ」


夕日を背に、深々と頭を下げるハノイ、ロキ、エデン。
謝っているのは、風力車のことだ。



「全く本当だよ…。
お陰様で俺の大事な商売道具が重傷だ」


溜め息をつくアル。
しかし、その渋い表情はすぐに少年のような笑みに変わる。


「でも…まあ、お前らにもお前らなりの事情があったわけだし…。

お前らを責めるのも少し可哀相だよな」


アルの言葉に、飛龍たちは一斉に顔を上げた。



「ほ、ほ、本当に俺たちを許してくれるのかっ?」
「なんて慈悲深い奴なんだっ」
「さすが俺の相棒だぜ…」

肩を震わせ、目を薄ら涙を浮かべる三人は、口々にアルを称賛する。


「やばい…。涙で前が見えねぇ」
「後光がさしてるように見えるのは俺の目がおかしいのか?」
「安心しろ、ロキ。俺にもしっかり見えるぜ」




騒がしいハノイたちの傍ら、静かに話を聞いていたウルドがぼそりと口を開く。

「俺、アルの後光見えない…」


ウルドは何故か少しだけ不安な表情。


「ああ、ウルド大丈夫だよ。それが正常だから」

イオは、少し天然なウルドの背中を軽くぽんと叩いた。





「おいおいおい…っ。何勝手に奉ってるわけ?

俺、別にこの件をチャラにするなんて言ってないぜ?
一応、落とし前はつけてもらわないとな」


アルの指摘に、ハノイたち三人の動きがぴたっと止まる。


「ひぃぃっ……やっぱり。

――落とし前って、どんな恐ろしいことをするんでしょうか…?」


ハノイは無意識の内に口調が敬語になってしまっている。


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