forget-me-not
「何、そんな恐ろしいことなんてしねぇよ。
どこまで想像力が豊かなんだよ…お前ら。
風力車を治すの手伝ってくれ。あとは俺の商売の手伝いをしてくれたら嬉しいんだけど?」
アルの穏やかな表情に、ハノイたち三人はきょとんとする。
「そ、それだけ?」
「そう、それだけ。
ただし、俺の仕事は甘くはないぜ?」
アルの言葉に、ハノイたちの表情はぱっと明るさを増す。
「ありがとうございますっ」
飛龍たちの威勢のある声が赤く染まる荒野に谺した。
これで、一件落着だ。
「よかったね、アル。
ハノイたちもこれからは盗賊しなくて済むね」
イオはアルの肩にそっと手をかけながら口を開いた。
「ははは、そうだな。
これからは毎日が賑やかになりそうだよ。
あ…。
イオとウルドはこれからどうするんだ?」
アルの問いに、イオとウルドは自分たちの本来の目的を思い出す…。
「―――私たちは引き続き二人で旅を続けるよ」
イオの凛とした声。
輝く深緑の瞳は、迷いや恐れを微塵も感じさせない。
「そうか、そうだな…ここでお別れなんだよな。
―――イオ、ウルド。
二人に出会えて本当に楽しかった」
アルの鳶色の瞳は、心なしか少し潤んでいた。
「あーっ。アル泣いてんのか?」
「本当っすね。目がうるうるしてるー」
「相棒ーっ。さりげに涙もろいのか?」
口々に囃し立てるハノイ、ロキ、エデンの三人を、アルは照れ隠しに一喝する。
「―――すっかり仲良しだな」
ふと呟いたウルドに、アルは困ったような顔で笑ってみせた。