forget-me-not
六つ並んだ影法師。
地平線の向こうに沈みかけている夕日。
「よしっ。俺らは愛車のもとへ向かうぞ。
早く整備しなきゃ仕事にならないからな」
アルがハノイたち三人に呼び掛ける。
やる気満々なアルに対し、あからさまに嫌そうな顔をする飛龍一同。
「えぇぇ?
今からはないだろっ」
ハノイがすかさず反論するが、アルは素知らぬ顔。
「あー、俺の愛車を傷付けたのは誰だったかな?」
左斜め上に目を反らし、わざとらしく呟くアルに、ハノイは渋々反論を止めた。
「悪いな。
今日は徹夜で整備だからよろしく。頑張ろうぜ」
「お、おう。
よろしく…」
ハノイは頬をぽりぽりと掻きながら答えた。
満足そうな表情を浮かべるアル。
「―――てな訳だ。
じゃあ、俺らはもう行かないと…。
またいつか出会える日を楽しみにしてるからな」
「俺、イオちゃんとお別れなんて悲しいっ。
ウルド、イオちゃん泣かせたりしたら俺がお前に噛み付いてやるから覚悟しとけよ」
「ロキ、噛み付くとか野蛮すぎなんだけど…。
あー。
俺はね、二人のこと応援してるから。
大好きだ畜生っ」
アルが別れを惜しむように言葉を紡ぎ、ロキとエデンもそれに続いた。
「ありがとう。
私、絶対忘れないから。皆と出会えた今日という日を絶対にね」
イオは心に刻むかのように一人一人の顔を見回した。
表情、声、人柄、雰囲気…。
何一つ忘れることがないように、何度も何度もしっかりと。
「イオ、俺たちもそろそろ行くぞ」
イオに声をかけるウルドの瞳は血の紅。
今沈もうとしている茜色との対比が美しい。