forget-me-not







荒野に竚む町、サンドーネ。

砂埃の侵入を防ぐために、町をぐるりと高い塀が囲んでいる。
砂埃が多いこの地域ならではの工夫だろう。





「ねぇウルド。凄い門があるよ」


イオの指差す先には、鉄製の頑丈そうな門。
この門がサンドーネの入り口だろう。
門には門番までいて、警備がしっかりとしているようだ。



「あの門を通らないと町に入れないみたいだな…」


ストールを、顔を隠すように巻くウルド。
しかし、ストールではせいぜい顔下半分を隠すのが精一杯だ。


「まずいな…。こうも暗いと瞳が目立つ」


忌々しげなウルドの呟き。
昼間ならそこまで目立たない紅の瞳。しかし、夜となれば別。
このウルドの異質な瞳は、暗闇の中でもその存在を主張するかのように、自ずと真紅の輝きを放つ。


どうしたらいいのか…。


町を目前としてウルドの足が止まる。




「ウルド、大丈夫。
私にいい考えがあるんだ」

ウルドの手を握り、イオは自信ありげに笑ってみせた。


イオの作戦…。

何かとんでもないことを考えたりしていないだろうか。
些か不安が残るウルドだが、ここは素直にイオの作戦に乗ることにする。



「じゃあイオに任せる…」
ウルドの控えめな解答。


「よしっ。そうと決まれば早速作戦開始だー」


イオは拳を空に掲げ、気合いを表明した。



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