forget-me-not
3
荒野に竚む町、サンドーネ。
砂埃の侵入を防ぐために、町をぐるりと高い塀が囲んでいる。
砂埃が多いこの地域ならではの工夫だろう。
「ねぇウルド。凄い門があるよ」
イオの指差す先には、鉄製の頑丈そうな門。
この門がサンドーネの入り口だろう。
門には門番までいて、警備がしっかりとしているようだ。
「あの門を通らないと町に入れないみたいだな…」
ストールを、顔を隠すように巻くウルド。
しかし、ストールではせいぜい顔下半分を隠すのが精一杯だ。
「まずいな…。こうも暗いと瞳が目立つ」
忌々しげなウルドの呟き。
昼間ならそこまで目立たない紅の瞳。しかし、夜となれば別。
このウルドの異質な瞳は、暗闇の中でもその存在を主張するかのように、自ずと真紅の輝きを放つ。
どうしたらいいのか…。
町を目前としてウルドの足が止まる。
「ウルド、大丈夫。
私にいい考えがあるんだ」
ウルドの手を握り、イオは自信ありげに笑ってみせた。
イオの作戦…。
何かとんでもないことを考えたりしていないだろうか。
些か不安が残るウルドだが、ここは素直にイオの作戦に乗ることにする。
「じゃあイオに任せる…」
ウルドの控えめな解答。
「よしっ。そうと決まれば早速作戦開始だー」
イオは拳を空に掲げ、気合いを表明した。