forget-me-not





「―――えっと…、作戦ってこれ?」


ウルドが訝しげにイオに尋ねる。
その微かに震える声から、ウルドの不安が伝わってくるかのようだ。


「そう、これっ。

そんな不安そうな顔しなーい」


イオの満足そうな表情に、ウルドはますます不安を募らせる。



何故なら…。


「こんな小細工通用するのか?」


そう呟くウルド。



見れば、ウルドの顔の鼻から上半分は大雑把に包帯で隠されている。


包帯の巻き方が粗いお陰で、完全な目隠し状態ではないが、やはり目が見えにくいことには変わりがない。


「イオ…これじゃまるで怪我人だ」


ウルドは溜め息をつく。
これでは余計に目立つような気がしてくる。



「もう、ウルドは心配性だなー。

怪我人っぽいのも作戦の内なんだよ。
そうだっ。血糊でも付けようか?」


イオは愉快そうに笑い、荷物をがさがさと漁り始めた。


「いや…イオ、十分だ。
血糊なんて止めよう、いや…止めてくれ」


ウルドの必死の頼みに、イオは荷物を漁るのを止めた。その表情はなんだか残念そうだった。


「そっか。じゃあ怪我人バージョンで作戦決行ね。

出発ー」


イオはウルドの手を取り、門に向かい歩き始める。


ひんやり冷たいウルドの掌から伝わる不安。



「大丈夫。
ウルドのことは私が守るから」


心強い言葉だった。
温かくて優しい響き。



「ありがとう」



ウルドはイオの手をぎゅっと握り返す。


イオの手は自分よりもずっと温かくて、小さかった。

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