forget-me-not
「そこの二人。止まって下さい」
門まで辿り着いたウルドとイオ。
やはり、門番に呼び止められた。
「はい。何でしょうか?」
二人は言われた通り、立ち止まる。
門番に尋ねたのはイオだ。
「ここ、サンドーネでは砂埃を防ぐために入り口に門を設けているのです。
私たち門番は、夜の門の開閉と警備を任されております。
少しだけ、お時間頂けますか?」
門番はにっこりと笑う。
どうやら先程まで想像していたような厳重な警備という訳ではなさそうだ。彼の丁寧な物腰は、二人の緊張を解す。
「はい、わかりました」
イオはウルドの手をしっかり握ったまま、門番の言葉を承諾した。
「あなた達は旅人ですか?」
門番の質問は案外簡単なことだった。
「はい、旅人です」
イオのはきはきとした答えに、門番は頷きながら何か書類らしき紙に書き記しているようだ。
「何を書いているんだ?」
今まで黙っていたウルドが口を開いたのだった。
「ああ、はい。
町に訪れる人の集計をとってるんです。
―――あっ。
これで質問はおしまいです。
今、門を開けますね」
そう言い残すと、門番は門の仕掛けを始動させにその場を離れて行った。
「やったね。作戦大成功だよ」
門番がこの場に居ないのをいいことに、イオは調子に乗り、ウルドに耳打ちする。
突然イオに耳元で囁かれ、顔が赤くなるウルド。
「――あ、ああ」
どうしてもぎこちない返答になってしまう。
しかし、自分の作戦が成功し、有頂天のイオにはウルドのぎこちなさなど微塵も気にならない。
「んー。
包帯ぐるぐる巻きなウルドも格好良いー」
イオはじろじろとウルドを眺め、素直な感想を述べる。
「……」
なんとも言えない複雑な気持ち。
ウルドは何も言わずに、イオの視線を我慢した。