こらしめ屋
次の瞬間、夏柑の表情が少し驚いた風になったけど、すぐにもとの表情に戻って、早足で階段を降り続けた。
だけど、一言も喋らずに…
あたしも、夏柑の雰囲気が喋ってはいけないと言っているような気がして、なにも言葉を発しなかった。
それに、夏柑の歩くスピードが速すぎて、小走りで着いて行くので精一杯だったし。
階段を降り、マンションを出て、しばらく歩いた後に、夏柑はようやく歩みを緩めて、深いため息をついた。
「はぁー…」
「夏柑、一体どうしたの?急に早足になって…」
「春花、お前みてなかったのかよ?」
「なにが?」
「顔だよ、顔。俺が階段でぶつかりそうになった奴の。」
「チラッとしか見えなかったけど?」
夏柑はキョロキョロと周りを見渡して、人がいないかを確認しているようだった。
「宮武だ。」