こらしめ屋
あたしは、その名前を聞いた瞬間、背筋が無意識にピンと伸びて、ぞわぞわーっとした。
「み、宮武が!?」
「あぁ。写真でしか見たことねぇけど、絶対そうだ。」
「危なかった…。あと少しでも部屋を出るのが遅かったら…」
背筋がゾクリとして、いまさらながら恐怖が波のように押し寄せてきた。
「ま、運が良かったってことじゃねぇの?得に俺の運が。」
「いつもながらだけど、自信過剰すぎ。一応まじめな話なんですけど。」
「俺はいつでも大まじめだ。」
「はいはい。まったく。」
あたしの背筋は冷や汗をかいていた筈なのに、夏柑のお陰で吹っ飛んでしまった。
たまには、夏柑の自信過剰も役に立つもんだ。
でも、本当に焦った。
あと一分遅く部屋を出ていたら……
って思うと、生きた心地がしない。