こらしめ屋
綾瀬家の居間は、廊下をしばらく歩いて右手の扉を開くとたどり着く。
居間にはあまり良い思い出がないんだよね…
悪い予感しかしないけど、あたしは逃げるわけにはいかない。
闘うって決めた。
もう過去を悲しむのも、恐れるのも、終わりにする。
覚悟はできた。
決意もしっかりと固まっている。
それでも足は微かに震えて、心臓の音はあたしを急かすように速く脈打つ。
あたしは、居間に続く扉に手をかける。
そして、静かに開いた。
「……春花。」
あっ…
覚えてる。
このしゃがれた低い声。
父親だ。
昔と同じで、やっぱり居間だった。
だけど少し違うね。
父親も、その隣に無言で立っている母親も、あたしに向ける視線は他人へのものだった。
家族を見る温かい目じゃない。
お前は誰だと言わんばかりの冷たい眼差し…
覚悟はしていたけど、やっぱり悲しい。
あたしは手足が震えるのを必死に抑え、二人を睨むようにして見据えた。