こらしめ屋
あたしが俯いて沈黙にたえていると、綾瀬文子はスタスタと歩いて来て、あたしの後ろにある扉に手をかけ、部屋から出ようとした。
「ちょっ、ちょっと待って!」
とっさに腕を掴み、引き止めた。
まだ何も聞いてないよ。
綾瀬文子は掴まれた腕を見ると、ゴミを掃うようにあたしの腕を払った。
「気安く触らないでちょうだい。あなたとはもう他人なんですからね。」
「…っ。」
払われた手をもう一方の手で抑えて、相手を睨む。
「なによ、その目は。何か言いたいことでも?」
あぁ…
この耳がキンとなるほど高い声…
高飛車で人を見下す喋り方…
相変わらず苦手だ。
この声を聞いていると、嫌な思い出ばかりが頭をよぎる。
本当に産みの親?って疑いたくなるくらい。
だけど、それでもあたしはめげなかった。
「まだ理由を聞いてない。あたしと、お母さんやお父さんが家族じゃないって、どういうことなの?」
すると、綾瀬文子は面倒くさそうにため息を一つ吐き、話し出した。