こらしめ屋
「…っ。けど…だけど!」
納得できないよ。
どうして?
どうしてそんなに、あたしの存在を無かったことにしようとするの?
そうまでして、あたしを捨てたいの?
「だけど…なにかしら?」
悔しいけど、言い返せない。
だって実際に綾瀬文子は殺人を犯してはいないし、もし訴えたとしても、きっとお金でもみ消される。
法律なんて、ほんと…役に立たないよ。
下を向いて黙り込んだあたしを見て、綾瀬文子は部屋を去ろうとする。
「何もないなら、私もこれで失礼するわ。」
「だっ、ダメ!」
あたしは前に向き直り、必死に引き止めた。
だって、まだ大切なことをきいてない。
1番ききたかったことを…
「まだ何か?」
冷たい言葉…
冷たい眼差し…
答えはもうわかっている。
だけど、きかなきゃ。
【俺がついてる。】
夏柑の言葉を胸にしっかりとおいた。
ほんの少しの希望と、大きな不安。
震える足と、汗ばむ手。
感覚のない唇で、あたしは言葉を紡いだ。