こらしめ屋




「なんで、あたしのこと置いてったの?」




やっときけたこの問。


しばし沈黙があり、綾瀬文子は静かにあたしに向き直る。

一瞬だけ目が合ったけど、すぐに反らされてしまった。

そして、冷酷な言葉があたしに浴びせられる。




「嫌いだったのよ。」




予想はしてたけど、面と向かって言われるとかなり傷つく。

お腹が悲鳴をあげるように、キリキリと痛んだ。



「それは…あたし自身が?」


「違うわ。子供自体が嫌いなのよ。生意気で、無知で、常識はずれで、とても手のかかる…。本当、大嫌いだわ。そんなものの世話なんてしたくなかったのよ。」


「そんな…、そんな理由であたしのこと…」


「そんな理由ですって!?子供を育てたことがないから言えるんだわ!夜は眠れないし、数時間おきにミルクをあげないとならないし、面倒なことばかりよ。」


「じゃあ、なんで産んだの!?捨てるぐらいなら、最初から無かったことにしてよ!」



そしたら、あんな苦しみを味わわずに済んだのに…



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