こらしめ屋


「大人には色々とあるのよ。」


「ごまかさないでよ!なんで大人はいつもそうなの!?子どもだからって、なんで真実を教えてくれないの!?子どもは、大人が思ってるよりずっと大人なんだよ!?あたしも立派な一人の人間なのに!」



そう一気にまくし立てると、綾瀬文子も声を強くして言い返してきた。



「じゃあ言うけれど、大人だって、子供が思っているよりずっと子供なのよ!?それなのに、世間の目は気にしなくてはならないし、大変なことばかりだわ!社長婦人が中絶した、なんて知られれば世間になんて言われるか…!子供のあなたには、この辛さがまだわからないのよ!」


「世間体を守る為にあたしを産んだの!?自分の地位を守る為に!?そんなの酷いよ!あたしは世間体を守る為の道具じゃない!!」



自然と涙がこぼれてきた。


あたしは、望まれて生まれてきたんじゃなかったんだ。

ただの道具として生まれてきたんだ。

だから捨てられた。


そんなの酷すぎるよ…

あたしだって、ちゃんとした命なのに…

意思も心も持っているのに…



< 222 / 290 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop