こらしめ屋




あたしが下を向き、唇をギュッと噛み締めて、涙を堪えていたときだった。


手に温かい感触がした。



「……海?」



そう、海があたしの手を優しく包んでくれたのだ。

そして、はらはらと泣きながらこう言った。



「…っ…春花。が、頑張ったね。いっぱい…ヒック…辛かった…のにっ…」


「…海ぃ…っ…」



温かい海の優しさに、あたしは遂に泣いてしまった。


我慢していた糸がプッツリと切れてしまったように、それをきに声をだして泣いた。


悲しいからじゃない。

嬉しいから。



海の手が温かく包み込んでくれてる、その感覚で……

人の温もりを感じることで、あたしは生きてるということを強く実感した。


同時に、一番の親友が、あたしをこんなに大切に思ってくれていることが凄く嬉しくて…



7年振りに声を出して泣いた。

7年前とは全く逆の意味で泣いた。



傷ついた心が、その温もりと涙で潤っていくような気がした。



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