こらしめ屋
そんなある日、四季がひょっこりと事務所に顔を出してきた。
四季と会うのは、綾瀬家の件以来だ。
《カラン、カラン》
と、真夏の暑い空気を震わせる鐘の音が、奥の部屋に居たあたしにも微かに聞こえた。
「春花…いる?」
そうたずねた四季に、初めに対応したのは和樹だったらしい。
運悪く…ね。
「は?春花に何の用だ?」
「ちょっと話したいことがあってさ。」
「春花はいねーよ。」
そこで、ようやく奥の部屋から出て来たあたしは、急いで和樹と四季の元へと駆け寄った。
「ちょっと和樹!勝手に居ないことにしないでよ!四季、ごめんね?」
「いや、気にしてないよ。」
この瞬間、和樹の人間関係センサーが発動した。
「ちょっと待った。四季って、こいつのことか?杉崎じゃねーの?」
「え?言ってなかったっけ?四季の本当の名字は、綾瀬なんだよ。綾瀬四季。」
「だからって、何で下の名前で呼んでんだよ。」