こらしめ屋
しばらくして、四季はすっと腕をほどいてくれた。
「春花、本当にありがとう。」
「あたしもだよ。ありがとう、四季。」
「僕、寂しい思いはしたけど、両親には感謝しているんだ。」
四季は気まずそうに話し出した。
「後継ぎにする為とはいえ、身寄りのない僕を養ってくれたのには変わりないからね。だから、…僕は綾瀬として生きるよ。」
「そっか。」
そうだよね。
四季は綾瀬財閥を引き継がなきゃいけない。
「僕、頑張るよ。綾瀬財閥の頂点に立ってみせる。そして、春花の手助けをしたい。」
「あたしの…手助け?」
首を傾げてきくと、四季はこくりと頷いた。
「資金の面でも、ネットワークの面でもね。」
四季はそう言って、優しく笑った。
「……?」
どういう意味だろう?
あたしがたずねようとすると、腕時計を見た四季が慌てた様子で、
「もう帰らなきゃいけない時間だ。経済学の塾がある。」
と言った。
「春花、今日は本当にありがとう。話ができてよかった。じゃあね。」
四季はそう言うと、急ぎ足で歩き出したので、あたしは慌ててその背中に向かって、
「またね!」
と言って、手を振った。