こらしめ屋


四季と別れたあたしの足は、なんでか夏柑の事務所へと向かっていた。


よくわかんないけど、なぜか無性に夏柑に会いたい。

夏柑に、四季とのことを話したい。

家族ができた喜びを聞いて欲しい。




《コンコン》



事務所の扉をノックしたけど、やっぱり返事は無かった。

あたしはいつも通り、勝手に扉を開ける。


ギィーっと軋む音がして扉が開いた。



「あ?春花か。どうした?」



やっぱり居た。

だけど、今日は珍しく、あたしが入って来たことに気づいて、しかも!夏柑から声を掛けてきた。

こんな時に限って、タイミングバッチリなんだから。



「べ、別に、なんにも。近くまで来たから寄っただけ!」


「なんだそりゃ。珍しいな。お前いっつも用ある時だけしか、ここ来ねぇじゃん。」


「そ、そう?」


「そうだっつの。お陰で俺は、寂しい思いしてんだぜぇ?」


「夏柑が?ありえないでしょー!」



あたしがそう言って笑うと、



「いや、まじだから。」



なんて言いながら、こっちに近づいて来た。



は?

なに、この展開?



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