こらしめ屋
「じゃあ、協力よろしく!」
「おう。任せとけ。」
夏柑は自信たっぷりにそう言うと、口角を少しだけ上げて笑った。
「それより、四季とはまじで何でもねぇんだろな?」
「何でもないって。大切な弟。それだけだよ。」
「あっそ。」
夏柑からきいてきたのに、素っ気ない返事を返された。
「じゃ、あたし帰るね。また連絡するから。」
「おう。じゃあな。」
珍しく夏柑に見送られながら、あたしは事務所を後にした。
事務所の中に残された夏柑は、春花が扉を閉めて見えなくなると、ポツリと呟いた。
「気づけよ、バーカ。」
この言葉が春花に届くことはなかったし、もちろんその意味を知ることもなかった。
ただ、さっきの演技でほんの少し、本当の気持ちが折り込まれていたことだけでも、気づいて欲しかったのだけど…
夏柑はため息を一つ吐いたものの、四季と春花に新しい関係が生まれていなかったことに安心した。
そして、春花の手伝いをするために、溜め込んでいた依頼を一気に片付け始めたのだった。