こらしめ屋


そう思った時だった。

あたしの視界に、サッと黒い影が割り込む。



「…和樹!?」


「てめぇら、まじで春花の親かよ!?実の娘に言う言葉じゃねぇよ!」



和樹があたしを庇うようにして、両親との間に割って入ってくれたのだ。


嬉しいけど…

あれ程おとなしくしてろって言ったのに!



「なんだね、君は!口のききかたに気をつけたまえ。私は綾瀬財閥の会長だぞ!」


「んだと、こんにゃろ!そんな肩書きがどうとか以前に、てめぇも一人の人間だろうが!」


「な、なんだと!生意気な…!」


「和樹、もういいから黙って!」


「…っけどよ!」


「もう十分だって。話を進めよう。夏柑!」


「あいよ。俺様の出番だな。」



扉のすぐ近くで待機していた夏柑は、不気味に微笑みながら、両親の方へと近づいて行った。

あたしの横を通り過ぎる時、チラッと見えた横顔。



あっ…

やばい。

キレてる…



夏柑の顔は笑っていたけど、心の中は完璧に怒りマーク満載だ。

笑顔が恐い…



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