こらしめ屋
「それで、私たちは何をすればいいの?」
海がキラキラした目で聞いてきた。
「得には、まだすることないなー。」
「そっかぁ。」
残念そうな海の顔を見ると、心が痛むよ…
でも、こればっかりは本当にどうしようもない。
「とりあえず今日、依頼主と会って実行するか決めるから。」
「えっ?実行しないこともあるの?」
海が慌てて聞いてきた。
「…うん。」
「どうして?」
今度は不思議そうな顔。
「う~んと。それはね…、ちゃんと理由があってさ。」
「理由?」
「うん。和樹と渉も覚えといて。」
と、あたしが二人に注意を促すと、3人は話を真剣に聞いてくれた。
あたしは一度俯くと、グッと歯を噛み締めてから顔を上げ、話を続けた。
「例えばさ、例えばね。『彼氏をこらしめて』って依頼がきたとするでしょ?それで、理由を聞いて、『浮気された』だとか、『暴力をふるう』だったら、こらしめるよ。
でもさ、ただ『イラつくから』だとか、『浮気がばれて怒られたから仕返しに…』だったら、こらしめるわけにはいかない。だって、どう考えたって依頼主の方が悪いよね?」
無言で3人は頷いた。