こらしめ屋
あたしは気を引き締め、白銀通りを少し進み、3つ目の角を右に曲がった所にある、『親和町』へと向かった。
親和町、1丁目…2丁目…
あった!3丁目!
3丁目と書いてある電柱を見てから、何度か、右へ左へと、曲がったり直進したりすると、やっと、あいつの事務所に着く。
そう、【佐伯夏柑・探偵事務所】に。
手書きの看板と、ボロイ玄関が目印。
端から見れば、とっくに閉業した事務所にしか見えない。
こんなんでお客さん来るのかな?
まあ、看板も出してないあたしが言うのもアレだけど…
一呼吸おいて気合いを入れると、扉を数回ノックした。
だけど、返事はない。
あたしはサビだらけのドアノブに手をかけ、扉を押し開けた。
『ギィー』っという嫌な音と共に扉が開くと、中から、
「おせぇ。もう5時半なんですけど。」
と、気だるそうな声が聞こえた。
けど、とりあえず無視して、あたしは中に入った。
声の主は構わず続けた。
「で?なんか用?」
相変わらずやる気のない声だ。
あたしは少し『イラッ』としながら応えた。
「依頼に決まってんじゃん。」