こらしめ屋
「はぁ~。疲れた…。」
事務所を出ると、あたしは自然にため息をついていた。
本っ当に、夏柑の相手は疲れる…
自己中すぎ!
和樹といい勝負だ。
ってか、それ以上!?
そんな事を考えつつ歩いていたら、角を曲がった瞬間、
『ドンッ!!!』
何かにぶつかった。
「うわっ!?」
「いったぁ~!!?」
あたしは思わぬ障害物にバランスを崩し、尻もちをついた。
相手はこけてはいなかったけど、反動で電柱にぶつかっているのがチラッと見えた。
「ご、ごめんなさい!!あたしボーッとしてて…。あっ!ケガしませんでしたか!?」
あたしは急いで立ち上がり、相手の人に近寄った。
「大丈夫だよ。ごめんね?君こそケガはない?」
「えっ?…は、はい!
大丈夫です。」
「そう。よかった。これからは、曲がり角に気をつけてね。」
「はい!気をつけます。本当にごめんなさい!」
【何だかメッチャ優しい人だなぁー。周りにはいないタイプだ。】
と、思いながら、頭をペコッと下げてまた歩きだした。
後ろを振り返らずに歩いて行ったので、この男の人があたしの方をもう一度、振り返ってから歩きだしたなんて、この時のあたしは知る由もなかったんだ。