こらしめ屋
「最悪っ……」
杉崎が出て行ったのを確認したあたしは、まだ止まらない涙を流しながらポツリと呟いた。
人前で泣くなんてありえない。
しかも、よりによって杉崎なんかに見られてしまった。
泣き顔なんて、この7年間誰にも見せたことがないのに。
泣けばあたしの弱さを知られてしまうから。
あたしって、弱虫のくせに強がりで、みんなの前では、悩んでる時でも笑顔つくって気づかれないようにしてる。
でも、そのくせ心のどっかでは、誰かがあたしの闇に気づいてくれて、なぐさめてくれるのを少し期待してる。
捻くれた性格だってわかってる。
だけど、あたしの7年を壊さないようにする為にも、人前で涙を流すことと、綾瀬財閥について話すことを一切、自分に禁じた。
あたしは恐いんだ。
7年間の思い出が、いつか音を立ててガラガラと崩れてしまいそうで…